近年の建築及び住宅は温熱環境や製品データの数値化による評価の傾向が強くみられます。定量的な数値で性能を把握できることは消費者にとってメリットはありますが、供給者側(ハウスメーカーや施工業者)の営利目的の道具となっている面を否定できません。高性能化を競うあまり居住者が求める性能以上の住宅を建設し、消費者及び供給者相互で経済的負荷が限界を迎えるのは明らかです。
我々「感共建築ラボ」は、一般的に示されている指標や説明と体感とのミスマッチおよびミスジャッジを防ぎ数値が持つ意味を正しく伝えながら、居住者個々にとっての最適な環境へ適正化させるお手伝いをしています。生理的な体感の考慮や建物外部の環境の向上による室内環境の快適性の向上などの調査研究結果は、我々独自の見識として注目に値します。
1.人間の五感を考慮した快適性
人間は生まれながらに自分をとりまく環境に順応していく能力を備えています。感共建築ラボは、五感を考慮した本質的な快適性と自然環境との共存を建物内外や地域において実現するお手伝いをしています。無味均一な環境で育った子供たちは発汗能力が低下し、無菌状態で育った子供たちは様々な菌への抗体能力が低下することをご存知でしょうか?人が本来持っている能力を上手に使いながら快適な環境を作ることが必要なのです。
2.高断熱高気密 → 必要な断熱性能と必要な気密性能
我々「感共建築ラボ」のメンバーは安易に高気密高断熱という言葉は使いません。必要な環境は各家庭で違いますし、最適な環境は家族間でも違います。熱がりの夫と寒がりの妻が一緒に暮らす住宅で不快感のない環境を作るために必要な性能はどのように決めればよいか、我々メンバーはそんなことを考えながらアドバイスしています。
3.周辺環境を整える
住宅単独の性能を向上させるだけでは最適の室内環境を作ることはできません。視覚(景観)的に、または外部の温熱環境(空気の質や温度湿度)を整える必要があるのです。たしかに、住宅の断熱性・日射遮蔽・気密などの性能を上げることで、自然温熱環境を快適な環境に近付け、また、冷暖房負荷を削減することはそれなりに実現できます。
しかしながら、窓を開放したときに入ってくる空気の空気質を改善し、夏と冬の自然エネルギー有効利用をさらに促進するためには、公空間と私空間の中間ゾーンである「共空間」と私空間と私空間の中間ゾーンである「共空間」の環境を整える必要があります。
4.自立循環 → 共立循環
世界的な温暖化対策が急務となっていることは、周知の事実となっています。日本では、とりわけ家庭部門の温暖化対策が必要な状況です。スマートハウス、スマートコミュニティなどによる省エネ化対策の研究が進んでいますが、設備頼みの省エネ対策は設備更新時に追加投資が必要となり、持続的な温暖化対策とはいえません。
「感共建築ラボ」では、設備頼みの省エネ対策ではなく、地域ごとの気候風土を利用したパッシブ技術による省エネ化対策と、人間の生理学的能力を利用することで人が本来持っている適応力を復元し極力空調に頼らないスタイルを推進・提唱します。そのためには、「住宅単独の自立循環」から「住宅街区あるいは町内などの小さなコミュニティー単位での共立循環社会」を構築する必要があります。場(スペース)とエネルギーの共有化(シェア)は、皆でシェアするという行為を通じて住宅街区の住民同士の絆を高め、助け合いの精神を育むことを自然と実現してゆきます。「自立→共立」は単なる省エネ化技術ではなく、「地域コミュニティーの再生」にも大きく寄与するものとなります。
5.資産価値の向上
現実に即したレベルの建設イニシャルコスト・維持ランニングコストの適正化(life cycle management の実施)、ヒートアイランドの抑制や日射を有効利用する樹木計画、さらには通風効果を高める外構計画など、共空間を温熱対策・騒音対策・匂い(臭い)対策・光量調整・色彩調整などをトータルで整えることにより、住居環境の質の向上が期待でき、加えて住宅街区全体で不動産価値の向上につながります。これにより、小さなコミュニティーの中で場(スペース)とエネルギーを共同・共有しながら、住宅単独では実現できないレベルに省エネ化した良質な住宅街区を作り出します。